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日本市場や日本企業の再認識と情報発信を考える懇談会 第1回懇談会 収益改善のポテンシャルを秘めた日本企業 市場の活性化とIR 平成24年12月19日

第1回懇談会が開催されたのは、衆議院選挙が終了した直後の2012年12月19日。為替市場は長く続いていた円高局面から円安に転じ、国内株式市場にもようやく明るい兆しが見え始めた時期です。懇談会の前半は、M&Aアドバイザリー業務を行うフロンティア・マネジメントの代表取締役、松岡真宏氏が「収益改善のポテンシャルを秘めた日本企業」というテーマで、企業経営や株式市場への提言を行いました。後半では、日本IR協議会の事務局長を務める佐藤淑子氏が、株式市場のさらなる活性化に向けたIR活動の課題について話しました。それぞれのテーマに基づき、参加者の間で活発な議論が交わされました。

松岡氏は外資系証券会社の証券アナリストを務めたのち、産業再生機構で事業再生に携わりました。前半のプレゼンテーションでは、企業の外側と内側からの視点で、日本企業の課題と可能性について話しました。
プレゼンテーションの資料はこちら

不況下でも個別案件にフォーカスすれば
収益のチャンスが広がる

写真:松岡委員

私はアナリスト時代に、主に流通株や小売株をリサーチしてきました。小売業の時価総額上位ランキングを振り返ると、非常に大きな変化がありました。1990年はトップ10社に百貨店が5社入り、法的整理された長崎屋が10位に入り、私が産業再生機構で担当したダイエーも8位に入っています。

一方、2010年までに百貨店の統合が進んだこともあり、トップ10社のうち百貨店は2社に減り、順位も下がりました。それらを時価総額で上回ったのが、この5年、10年で力をつけてきたファーストリテイリングやニトリ。この20年で小売業の業界地図は大きく変化しました。「失われた20年」と言われながらも、きちんと個別銘柄にフォーカスしていけば、いい投資案件があったことが見てとれます。

一方で、コンサルタントとして内部から会社を眺めてみると、これまで見えなかったいろいろな現象が見えてきました。日本企業の収益改善が進展しない理由として、3つの論点を提示します。1点目は、ビジネスモデルの変更が先送りされる構造問題。労働組合が非常に協力的で、ボーナスが年間で1カ月に満たない水準まで下げられても、変えられるべき経営者が労組の協力で温存され、ビジネスモデルも温存された結果、収益体制が改善されないケースは多かったと思います。したがって、収益改善に向けた可能性としては人事、特に企画担当役員に誰が就くかが、企業収益や株価を決める要素として大きいと思っています。

事業の再構築に向けた莫大なお金を
呼び込むインセンティブづくりを

写真:懇談会の様子

2点目は、長年の業績不振のため、本質的な業績改善が非常に困難になっていること。かつては小売業でも、利益が出ている店舗と出ていない店舗の差が非常に大きかった。この場合は赤字を出す店舗を整理することで、利益は大きく改善します。しかし、近年では利益が出ている店舗の利益が小さくなり、出ていない店舗の赤字も非常に小さい。両者の格差が縮小してきたため、簡単なリストラだけでは利益が出にくい構造になっているのです。

本格的な利益改善をするためには、閉鎖にかかる損金が大きいところに手をつけざるを得ないと考えています。例えば閉鎖に100億円のロスが出るような店舗を持つ会社の場合、たとえ年間で2億円の赤字を垂れ流しても、5年程度なら仕方ないということで、赤字体質が温存される。こうした店舗や部門が日本企業の中に数多く見受けられます。そうしたところにニューマネーを投入して、不振な店舗や部門を閉鎖する必要がある。問題はニューマネーをどのように獲得し、それをどう既存の株主に説明していくのか。そのために事業再構築に向けたインセンティブづくり、具体的には企業収益が上がり、株価も上がっていくというストーリーも重要となります。

3点目は、株主や債権者からの健全なプレッシャーが希薄になっている点です。近年は金融安定化法の影響や、一部のアクティビストの行動が問題となったことで、ステークホルダーからのプレッシャーがほとんどなくなっており、きわめて不健全に見えます。そこで私が提案したいのは「株主の代理人」、つまりエージェントとしての組織をつくることです。きちんとした資格を持った代理人が、例えば四半期ごとに個別の株主を訪ねて、それぞれの株主が何を望んでいるのかを集約して経営者に伝えるという、いわば「情報の問屋機能」をつくっていく必要があるのではないでしょうか。

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