第1部 講演 「これからの日本と私たちの投資」

新たな技術革新がもたらす
世界経済の明るい兆し

東京大学名誉教授、学習院大学 国際社会科学部教授
伊藤 元重氏

東京大学経済学部卒業。ロチェスター大学経済学博士号( Ph.D)。専門は国際経済学。テレビなどでコメンテーターを数多く務め、また復興推進委員会委員長、経済財政諮問会議議員、税制調査会委員等を務める。

長期停滞を続ける世界経済の3要因

世界経済は今、長期停滞期に陥っています。その理由は3つです。まず1つ目は、世界の主要国が一斉に少子高齢化に直面している問題。日本の団塊の世代やアメリカのベビーブーマー世代が高齢化し、過去に類を見ないほどシニア層の人口ボリュームが厚くなっています。多くの中高年が老後を考えているため、消費に対して消極的です。投資の面でも、アベノミクスの恩恵を受けた日本企業の多くが、少子高齢化の進む日本の市場に明るい未来を見いだせず、投資を控えています。

2つ目は、リーマン・ショックの余波。リーマン・ショック後のアメリカ経済はV字回復を期待されていましたが、実際はL字型に近い状況が現在まで続いています。
3つ目は、世界的な技術革新がないことです。アメリカの経済学者ロバート・ゴードン氏によると、1880年から100年間アメリカが黄金期だったのは、技術革新によって安定した成長を続けてきたからだと言います。経済成長を押し上げる技術革命が近年起こっていないことが、世界の低迷を招いているとゴードン氏は述べています。
日本の経済については、黒田日本銀行総裁が就任する前の物価の平均上昇率はマイナス0.6%でしたが、就任後3年間の平均上昇率はおよそプラス0.5%です。デフレ脱却はそれなりに成功していると言えます。しかし、これまでに大きな金融緩和を2回ほど行いましたが、これ以上は難しいでしょう。マイナス金利政策によって長短金利が下がってしまったため金融機関の収益構造が非常に悪化しています。日本銀行の今後の対応は、金融機関の収益構造をある程度確保したうえで、低金利を続けると推測しています。

日本の財務状況と3つの課題

日本の厳しい財政状況は3つの視点で考えられます。1つ目は、1000兆円の膨大な借金があること。2つ目は、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字を解消すること。3つ目は、団塊の世代が2025年に75歳を超え、医療費や介護費の負担がこれまで以上に増えることです。
この3つの問題に対し、順に取り組んでいかなくてはなりません。まず、プライマリーバランスによる財政赤字をなくすことから始めます。第2次安倍政権発足後、デフレ脱却が進みました。税収も増加し、2015年にはプライマリーバランス赤字を2010年度比で半減することに成功しました。
次に、1000兆円を超える借金をどう対処していくかについてです。1000兆円の借金に対して、GDP(国内総生産)はその半分の500兆円になります。
500兆円の赤字を圧縮するためには、毎年10兆円の黒字を作って返済しても50年はかかる計算になります。10兆円の黒字を確保するには消費税を35%まで上げる必要があり、医療費や年金の大幅な削減を行う必要があります。しかも、50年続けるのです。この方法は現実的ではありません。
次の方法ですが、1000兆円の借金を減らすことはとても難しいので、これ以上増やさないようにします。仮に、分母であるGDP500兆円が毎年3%ずつ成長すると、30年後には2.45倍の1250兆円になります。逆に成長率が伸びない場合は、物価を少し上昇させて借金を減らしていくという方法をとるしかありません。つまり、経済成長の見込みが厳しい以上は、これからの資産運用はインフレを前提に考える必要があります。今すぐインフレが起こるわけではありませんが、5年後や10年後にはそういったシナリオも十分考えられます。

技術革新により世界がデフレを脱却

しかし今、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの台頭から変化の兆しが現れ、ビッグデータやクラウドコンピューティング、ロボットなどが世の中を変えようとしています。こうした変化は、金融、ものづくり、eコマース、医療、教育、労働市場など、ありとあらゆる分野が影響を受けるほどの大きな技術革新だと予測されています。この技術革命により、これまでの悲観的な世界経済の見通しがすべて晴れてくる可能性すらあります。
投資とは、世の中がどう変わっていくかを考える世界です。2015年フランスのパリで開かれた国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、各国がGDP当たりの二酸化炭素(CO2)排出の削減目標を提出しました。日本は2050年までにCO2の排出量を今から80%も減らさなくてはなりません。某自動車メーカーのトップは、「まだ自動車の台数は増える可能性が大きいので、1台当たり90%以上CO2の排出量を減らさなくてはならない」と話しています。

CO2を90%まで減らすということは、これまでのガソリン車やハイブリッド車では生き残れません。すべての自動車は、電気自動車か燃料電池自動車、またはバイオ燃料電池自動車に替わっていく必要があります。
難しい取り組みではありますが、実現できれば日本の自動車メーカーにとって国際競争の大きなチャンスになります。世界を救う技術革新の実現には、投資による資金の支援が必要です。もし本当に大きな技術革新が起こり、日本の経済成長率が2%や2.5%と上がれば、インフレを起こすことなく日本のGDPは増えていくでしょう。
現在、世界経済は非常に厳しい状況ですが、フランスの哲学者アランの言葉に「悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである」とあるように、悲観的な感情に溺れることなく、楽観的な意志をもって、これからの投資に臨んでください。

第2部 パネルディスカッション
「知って驚き!金融リテラシー(知識・判断力)が身に付くと、日本はこう変わる!」

資産運用を“しないことのリスク”を理解し
100年後の将来に備える

<出演者>

東京大学名誉教授
学習院大学 国際社会科学部教授

伊藤 元重氏

東京大学経済学部卒業。ロチェスター大学経済学博士号( Ph.D)。専門は国際経済学。テレビなどでコメンテーターを数多く務め、また復興推進委員会委員長、経済財政諮問会議議員、税制調査会委員等を務める。

マクロエコノミスト
エイボン・プロダクツ(株)
社外取締役

崔 真淑氏

神戸大学経済学部、一橋大学大学院(MBA)卒業。大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)では株式アナリストとして活動し、最年少女性アナリストとして株式解説者に抜擢。2012年に独立。経済学を軸にニュース等の解説をメディアや大学等で行う。若年層の金融リテラシー向上のため活動している。

タレント
パックンマックン

パトリック・ハーラン(パックン)1970年アメリカコロラド州出身。吉田 眞(マックン)1973年群馬県富岡市出身。1997年結成。アメリカ人のパックンと日本人のマックンの日米お笑いコンビ。異国コンビとして、日米のイメージを扱ったネタで人気を博す。現在はテレビなどのメディアでの出演を始め、精力的に講演活動も行っている。

<モデレーター>

ジャーナリスト
田原 総一朗氏

早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。東京12チャンネル(現:テレビ東京)に開局とともに入社。1977年にフリーになり、テレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。現在、早稲田大学特命教授として講義をするほか、テレビにも多数出演している。

株も野菜も育てかた次第

田原いきなりお聞きしますが、皆さんは投資をしていますか? もし、投資をしているのであれば成績はプラスですか? マイナスですか?

パックン僕は、日本で働くようになってから20年間、給料が入るたびに投資を行っています。途中、インターネットバブルを経験するなど、やけどをすることもありましたが、その教訓を生かして、今ではより安全なインデックスファンド中心の投資に切り替えました。投資の成績は、160%のプラスです。

マックン僕はもともと、投資は怖いものだと思っていたので、していませんでしたが、2008年10月4日の「投資の日」のイベントで、出演者の森永卓郎さんとパックンの話を聞いて投資を始めました。株式投資について森永さんには、「株という種があったら、その種をそのまま放置していても育つことはないけれども、うまく育てれば実がなり、下手に育てれば腐らせることがある」と教わったのです。
投資の成績ですが、僕が投資を始めた10月28日が、ちょうどリーマン・ショックの影響で日経平均が6000円台に落ち込んだ日だったので、完全に投資の成績はプラスです。

私は仕事の立場上、個別の企業に投資することができないのですが、投資信託やETF(上場投資信託)には投資をしています。投資を通じて新たな知見を得るなど、研究にも役立っています。
投資の成績は若干のプラスといったところで、実際の投資経験を通して語れることは多く、さまざまな場面で投資セミナーの講師として呼ばれることが増えました。
そんな、投資セミナーで面白い発見をしました。セミナーに参加する投資家の傾向から、男性と女性では、投資スタイルが全く違うことに気づいたのです。男性の大半は、ハイリターンを狙えるハイリスクの商品を選ぶ傾向があります。一方の女性は勉強熱心な方が多いのか、低リスク商品を選ぶ傾向にあります。

伊藤投資信託を持つほかに、為替取引もやっております。
私はドル円に関して、おおよそ100円程度が平均値であると考えています。3~4年前に1ドル80円台になった時に、「これはあまりにも高い」と思って円をドルとユーロに替えました。その後、4~5年保有し、1ドル120円台になった時に換金しました。投資スタイルとしては、長期保有スタイルといえるでしょう。

田原それでは、民主党政権の時に円をドルとユーロに替えて、安倍政権になってから円に戻したということですね。

伊藤いや、そういう訳ではありません(笑)。

自分より賢いファンドマネージャーに任せて長期投資

田原ところで、投資にリスクはつきものですが、リスクを回避するために、または儲けるために、みなさんはどのような情報収集をしていますか。

パックン日本経済新聞やウォール・ストリート・ジャーナルを情報収集の手段として活用しています。特に、ウォール・ストリート・ジャーナルは金融や経済に関する情報がとても速い。

マックン新聞やテレビといった情報収集の手段もありますが、僕は速報性を優先してインターネットを主に活用しています。スマートフォンの待ち受け画面には、常に日経平均を表示しています。

基本的に日本経済新聞とフィナンシャル・タイムズを活用していますが、情報量が多いことから、どの情報に着目すべきかわかりにくい。そこで、ツイッターを活用しています。ツイッターで尊敬する有識者の方をフォローし、その方々がどのような情報をチェックしているかを見ることで、情報の優先度の高さをつかむようにしています。
ただ、インターネット社会の時代になっているからこそ、直接会って聞くことができるオフラインでの情報も大切にしています。

伊藤私は仕事の関係で、常に複数の情報を耳にすることができます。例えば、政府の委員会に出席すれば膨大な情報を手に入れることができますし、実際に企業へ足を運んで生の情報に触れる機会もあります。重要なのは、どう情報を収集するかではなく、どう自分で考えるかです。
私が一番大切にしている時間は、一人になって3~4時間程度本を読む時間です。知識を得るために読書をするのではなく、読書から得た知識を材料に、あらゆることに考えを巡らせるようにしています。

田原先程、男性と女性では投資スタイルが異なる傾向にあるとのお話しがありました。男性は大胆な投資を行い、女性はこまやかだということでしたが、皆さんは当てはまりますか。

パックン投資を始めたての頃は、まさに男性的なハイリターンを狙えるハイリスクの投資を行っており、結構痛い目にも遭いました。最近は、多少女性的なこまやかさを身につけたと言えるのか、ファンドを買ったら僕より賢いファンドマネージャーに任せておく、いわゆる長期投資のスタイルになりました。僕より賢い人はなかなかいるとは思えませんが・・・(笑)。

マックン僕の場合は、奥さんを説得するのが大変でした。奥さんは、「わざわざ投資する必要はないんじゃない? 貯金で十分では?」という意見で、本当に、夫婦喧嘩になりそうでしたね。

私は、資産運用における夫婦喧嘩の相談をよく受けるので、そういった場合に効果のある対処方法を紹介します。ポイントは、資産運用を“しないことのリスク”を理解することです。
ロンドンビジネススクールのリンダ博士の研究によると、年々、人間の平均寿命は増加傾向にあり、2007年に生まれた子どもの場合は、およそ107歳まで生きる計算になるそうです。お金にお金を稼いでもらわないと、つまり資産運用をしないと、生活が厳しくなる時代が来ているということです。

パックンうちの娘はちょうど2007年生まれです。これまでも大変だったのに、これから100年・・・。

100年分娘さんにお金をかけられるよう、金融リテラシーを向上させないといけませんね。

田原ところで、金融リテラシーとは、どういうことを言うのでしょうか。

伊藤金融リテラシーとは、経済や金融について関心を持たなければならないということです。昔は読み書きとそろばん、それに体力さえあれば、何とかなりました。しかし、現代は経済にも関心を持ち、自分で考えることが生きるうえで重要になっています。

金融リテラシーって金融商品を購入する側の人間だけでなく、金融商品を売る側にも必要だと思います。

田原ただ、金融商品を売る側の企業は、企業としての売り上げも考える必要があります。投資家も含めてどう考えればよいでしょうか。

パックン僕は企業の社則も含めて、変えていく必要があると思います。日本の金融社会が持つ大きな課題ですね。

離脱後に試されるイギリスの金融市場

田原日本経済への影響を考えると、どうしても外せない話題として、米国の大統領選挙があります。現在、世間を賑わせているトランプ氏が共和党の党代表となりました。この状況をどう見ていますか。

伊藤トランプ氏の党代表の当選については、不完全な資本主義経済が生む格差の問題が関係していると思います。資本主義経済では、どうしても生まれてしまう格差を埋めるために、社会保障や税制などを整備し断続的に点検する必要があるのですが、米国では現状を変えたり格差を縮小することに対して消極的な人が多いのでしょう。トランプ氏に対する支持は、こうした米国内の現状が反映されていると思います。

田原自由競争をうたう色が強い共和党に対して、政府の介入によって格差是正を志向するリベラルな民主党が米国で政権を握ってからしばらく経ちますが、なぜ格差が是正されないのでしょうか。

伊藤それだけ、経済が大きく動いたということではないでしょうか。とはいえ、民主党オバマ政権では、医療保険の拡充など、進展した部分もあります。日本でもこうした、保障改革や働き方について検討する必要があると思います。

田原国内では、安倍政権となってからしばらく経ちますが、どう見ていますか。

アベノミクスが人々の金融リテラシーを向上させるため、さまざまな手を打っている点は評価できるかと思います。
金融庁が2016年9月に発表したレポートを見ますと、現在に至るまでの20年間で、米国の家計の金融資産は約2.2倍に増加したのに対して、日本では約1.5倍しか増えていないと報告しています。この違いは何かと、データから考察してみたところ、金融リテラシーの不足も要因ではないかと言われています。米国では積極的に資産運用などを通してお金にお金を稼がせるといったことをしていますが、日本の場合は、頑張って働いてもらった給料をそのまま貯金する習慣が根強いようです。

田原イギリスのEU(欧州連合)離脱に対してどうお考えでしょうか。

マックン離脱が決まる前からパックンとよく話をしていたのですが、離脱決定という結果に驚いたのが正直なところです。トランプ氏の候補選出もそうでしたが、今、世界の人々がならないでほしい方が選ばれてしまう雰囲気がありますね。

離脱の要因について、やはり資本主義経済や金融市場のあり方について不満を持っている人々がイギリス国内に多かったのではないでしょうか。
EU加盟国内における関税の自由化や、加盟国同士の国境審査なしでの人の移動が経済的にもたらすメリット以上に、人の移動に対するデメリットを感じている人々が多かったように感じます。

伊藤いくつか理由があると思います。EUという共同体が誕生するにあたって、人・モノ・金では、統合のレベルに濃淡があると思います。モノやカネが国境を越えて動くことのメリットは確かにいくつか存在しますが、移民問題をはじめ、人が国境を越えて動くことで生まれる問題は事情が異なるように思えます。
EUはこれまで、より深い統合の形を目指して、人・モノ・金など、あらゆるレベルでの統合を試みましたが、一度足を止めて適正規模を再検討しようとの動きがあります。今後、フランスやドイツなどが中心となってEUをどう守っていくのかにも注目が必要です。

パックンイギリス国内には、移民に雇用を奪われていると感じている人々が多くいます。統計的に見れば、移民の流入によって全体の雇用は増加していますが、職種によっては仕事を失う人もいて、そうした人々が移民に対して反感を持つのは人間の感覚として理解できる部分もあります。一般の人々と学者の見解には温度差があるみたいです。

マックン投資について勉強中の身にある僕は、イギリスがEUを離脱したことが、日本経済にどういった影響を及ぼすのかも気になります。

中長期的に見れば、移民をどうするかといった議論が欧州全体にゆがみを生み、政治的・社会的不安として広がることで、日本経済に影響を及ぼすのではないかと感じています。
もう1つは、今後、イギリスが金融立国として、どう生き抜くかもポイントになると思います。イギリスの金融市場が安定しなければ、リスクオフの円買いにつながる可能性もありますし、それは日本企業にとって好ましい状況ではありません。

利益率向上につながるアドベンチャー精神

田原日本の経営者と欧米の経営者のタイプが異なるといった話がよくあります。例えば、欧米では経営について学び経験を積んだ人が経営者となる一方、日本ではサラリーマン出身の社員が経営者になる。こうした違いが日本の企業を守りの体質にしているのでしょうか。また、日本企業に足りない要素はなんでしょう。

パックンリスクに対して非常に敏感な日本の企業は、挑戦する姿勢が足りないのではないかと思います。企業は利益から研究開発や企業家の育成に対して、お金をどんどん使っていいと思いますよ。
アメリカの企業家は、投資家と同じでリスクをしっかり背負い込みます。リスクを背負ったうえで挑戦するという姿勢を当たり前のように持っているのです。面白いアイディアがあれば、成功するまで挑戦し結果を出そうとするアドベンチャー精神を持った企業家がたくさんいます。また、アメリカには、その挑戦にお金を貸してチャンスを与える投資家も大勢います。

日本企業に足りないアドベンチャー精神に対して、喝を入れるようなお話が2つあります。
1つ目は、一橋大学の中野先生の論文によるものです。その内容は、日本企業は欧米企業に比べて、利益成長率に対して、研究開発費に投資する金額が非常に少なく、それが企業の利益率や株主利益還元率の低さにつながっている可能性があるといったものです。すなわち日本では、企業がより研究開発に資金を回せるよう促進する税制などの整備が必要なのではないでしょうか。
2つ目は、多様な人種・性別の起用が企業経営を活性化させるといったものです。アメリカのコーポレート・ガバナンスに関するレポートなのですが、アメリカでは、年配の男性だけで構成された取締役会を揶揄して“オールドボーイズクラブ”といった呼び方をしています。こうした取締役会に女性が入ると、異なる視点から意見が出ることで、企業のガバナンスが向上したり投資が促進されるといった研究結果がありました。日本でも、女性の活用などから、企業経営の質の向上などを期待したいですね。

“外の力を借りる”が日本企業の競争のヒント

田原近年、注目されているAI(人工知能)ブームに関して、国内の自動車業界があらゆる研究開発を行っているなどの報道を目にします。一方で、米国グーグルなど、米国大手IT企業との技術競争も意識する必要がありますが、日本企業はどう取り組めば良いでしょうか。

伊藤日本企業は競争相手となる海外企業に対して、「オール日本」ですべてに勝つ必要はないと思います。日本が持つ独自の強みを見極めつつ、海外企業に任せるところは任せる。そういった選択が必要です。
例えば、グーグルの持つ圧倒的な情報量には敵いませんが、国内を走る車が活用する際の位置情報などに関しては、国内企業が十分に対抗できると考えられます。

パックン僕は、日本の自動車産業やIT産業における企業の取り組みは少し出遅れ気味であると感じています。特に、自動車産業においては、海外に比べて人口密度が高い日本では、自動車関連サービスを提供する際に必要とする車の台数が少なくて済みます。つまり、無人自動車のようなテクノロジーが最も早く導入されるべき国だと思います。

マックン僕は海外企業に日本企業が負けてしまうといった心配よりも、AIに人間の仕事が奪われるといったことのほうが心配です。

田原その点については、2016年5月、オックスフォード大学の准教授等と野村総合研究所による共同研究で言及しており、10年、20年後には、日本人の仕事の49%はAIに変わるそうです。

伊藤私は、オックスフォード大学の研究所に行ったのですが、「今ある仕事は減ってしまうかもしれない一方、AIによって新しい仕事も誕生する」と言っていました。200年前の産業革命が起こった時代には、人口の約8割が農業に従事していたこともあり、人々の仕事が機械に奪われた一方で、膨大な新しい雇用も生まれました。

私はAIの出現によってハッピーな世界が待っていると楽観的に考えています。リクルート研究所の方から聞いた話なのですが、AIを採用のシステムに活用すると、合理的ですべての人にとって平等な採用が行えるというのです。
例えば、人が行う採用活動を調べると、同じ条件であっても男性を採用しやすいといった研究があります。そこで、AIによる採用を行うと、性別や人種に対して偏見のない採用を行うことができるのです。頑張った人がちゃんと報われる未来が待っているということではないでしょうか。

パックンAIがもたらす明るい側面は、例えば、AI活用によって、自動運転などの技術が発展すれば、連日の報道にあるような高齢者の運転事故などが減少し、安全な環境で暮らすことができます。
ただし、雇用の面では不安要素があります。日本や米国において、男性の雇用の自動車運転に関する職業が占める割合は非常に高い。この雇用が、AIによって急激に減少すれば、大きな影響となるでしょう。今のうちに、法整備も含めて対策を検討する必要があると思います。

田原最後に、ずばり日本企業はどうあるべきでしょうか。

伊藤企業はもっと投資家の声に耳を傾けるべきでしょう。自分達のやっていることが、常に投資家の目や批判にさらされていることを意識すれば、コーポレート・ガバナンスの向上にもつながると思います。
近年では、コーポレートガバナンス・コードが敷かれ、女性の活用について企業が真剣に取り組むきっかけもできました。まだまだ課題は山積していますが、少しずつ変化の兆しも見えてきている点は評価できます。

パックン僕は、企業が利益を追求することに集中できるよう、政府は規制や法整備などによって、企業活動を促進すると同時に、不正を取り締まるような規制を敷く必要があると思います。

日本企業に求めることは、外の力を借りるという姿勢です。コーポレートベンチャーキャピタルといって、大企業がベンチャー企業に対して積極的に投資を行っています。それだけに留まらず、多様な人種や性別の人を採用するなどを通して、企業は成長するきっかけをつかむことが必要でしょう。

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