5 Dimensions of Impact

提供

Impact Frontiers

想定される利用者

投資家

Impact Frontiersでは、どんなインパクトを測定する際にも「インパクトの5次元」について15 種類のデータを収集することを推奨しており、分析ツールとして「Impact Data Categories Template」を提供している。このツールはExcel を用いた表形式となっており、投資先のインパクト測定を行う際のテンプレート、あるいは既存データがインパクトの5次元を十分カバーできているかを確認する際のチェックリストとして、主に投資家、場合によっては企業が活用することを想定している。

5 Dimensions of Impactの概要

Impact Frontiersでは、インパクトを「組織によってもたらされるアウトカムの変化」と定義付け、ポジティブないしネガティブな、意図したものないし意図していないものも含むとしています。また、アウトカムとは、「組織によって引き起こされる、人々のウェル・ビーイングまたは自然環境の状態の変化」と定義されています。
 「5 Dimensions of Impact」は組織(投資先)の創出するインパクトに関する基本的な考え方であり、インパクトを「What(どのようなアウトカムか)」、「Who(アウトカムを享受するのは誰か)」、「How much (アウトカムの大きさはどの程度か)」、「Contribution(投資先の寄与度合い)」、「Risk(リスク)」の5つの次元から捉えるものです。創出されるインパクトを多面的に分析するツールとして多くのグローバルな投資家に活用されています。

想定される利用者とその利用シーン

「5 Dimensions of Impact」は、主に投資家が利用することを想定したものです。
投資家の中にも、人や地球にとってポジティブな変化の創出を自らの存在理由と捉えインパクトを管理しようとする投資家もいれば、規制リスクやレピュテーションリスクに対する懸念を動機にインパクトを管理しようとする投資家、商業的価値を明らかにするための方法と考える投資家もいます。

このように、投資家の意図は「リスク緩和」、「持続可能な長期の業績の達成」、「世界への大きな好影響の付与」といった広範な目標から、「特定の人・場所に存在するグループの支援」、「特定の社会・環境課題への対応」といった集中的な目標まで多岐に渡ります。

これらの目標を実現するためには、投資先への資金供給を通じて発現するインパクトを管理することが必要不可欠です。 5つの次元(「What」、「Who」、「How much」、「Contribution」、「Risk」)は、投資先を通じたインパクトの分析や、既存データがインパクトの5次元を十分カバーできているかどうかの分析を可能にし、自らのインパクト目標を更に明確化するために活用することができます。

(出典)Impact Frontiers「NORMS | FIVE DIMENSIONS OF IMPACT」「Investor Contribution」

WHAT(どのようなアウトカムか)

「What」の次元では、ポジティブかネガティブかにかかわらず、どのようなアウトカムが発現し、そのアウトカムがステークホルダーにとってどの程度重要なものかを分析します

WHO
(アウトカムを享受するのは誰か)

「Who」の次元では、どのステークホルダーがアウトカムを経験しているのか、そのステークホルダーがどのような不遇な状況に置かれているかを分析します

HOW MUCH
(アウトカムの大きさはどの程度か)

「How much」の次元では、アウトカムを経験するステークホルダーの人数、ステークホルダーにもたらされるその変化の程度、その変化を経験する期間を分析します

CONTRIBUTION
(企業の寄与度合い)

「Contribution」の次元では、企業<or 投資先>や投資家の取組みが、それを行わな方場合よりも良いアウトカムをもたらしたかどうかを分析します

RISK
(リスク)

「Risk」の次元では、インパクトが予想と異なる可能性とその重大性を分析します

5つの次元の分析ツール

Impact Frontiersのウェブサイトでは、5つの次元の分析ツールとして、以下のテンプレートが公開されています。

テンプレートに必要な情報を入力するために、まずはデータの収集を行う必要があります。
データ収集の対象は、15種類のデータカテゴリーについて、「指標(indicator)」、「データ(data)」、「データの情報源(source)」、「データに基づく評価結果(assessment)」の4種類の情報を揃えることが推奨されています。

次元What

インパクト
カテゴリー
定義 指標 データ データの
情報源
データに基づく
評価結果
(ⅰ) アウトカムの水準 企業と関わった場合にステークホルダーが享受するアウトカムの水準。アウトカムにはポジティブ又はネガティブ、意図的又は非意図的のいずれも存在する ポジティブ/
ネガティブ
アウトカムの閾値 ステークホルダーが「ポジティブなアウトカム」だと考えるアウトカムの閾値。かかる閾値を下回るとネガティブなアウトカムとみなされる。アウトカムの閾値は国内又は国際的に認められている基準でも良い
ステークホルダーにとってのアウトカムの重要性 ステークホルダーが享受したアウトカムが(他のアウトカムと比べて)重要であるかについてのステークホルダーの意見。アウトカムを享受した人々が提供したデータが良いが、第三者機関による調査も考慮してよい。アウトカムが環境に関する場合は、科学的調査の見解がこれに該当する
SDGターゲットもしくは他のグローバル目標 アウトカムと関連するSDGターゲットやその他のグローバル指標。アウトカムが複数の目標に関連している可能性もある 重要/
重要ではない

次元Who

インパクト
カテゴリー
定義 指標 データ データの
情報源
データに基づく
評価結果
ステークホルダー アウトカムを享受するステークホルダーの種類
地理的境界 ステークホルダーが社会・環境面のアウトカムを享受する場所
(ⅱ)ベースラインとなるアウトカムの水準 投資先へのエンゲージメント以前にステークホルダーが享受した、あるいは企業による影響を受ける前のアウトカムの水準 十分な状況/
不十分な状況
ステークホルダーの特性 ステークホルダーの社会・人口学的特性や行動特性、生態系の特徴

次元How Much

インパクト
カテゴリー
定義 指標 データ データの
情報源
データに基づく
評価結果
規模 アウトカムを享受した人数
(地球環境の場合、本カテゴリーは関係しない)
広範囲/
狭い範囲
深さ ステークホルダーが享受する変化の程度。深さは、「アウトカムの水準」(ⅰ)と「ベースラインとなるアウトカムの水準」(ⅱ)の間に生じた変化を分析することによって計算される 大幅な変化/
わずかな変化
期間 ステークホルダーがアウトカムを享受する期間 長期/短期

次元Contribution

インパクト
カテゴリー
定義 指標 データ データの
情報源
データに基づく
評価結果
事実に反する深さ 投資先へのエンゲージメントや、投資先の行動や投資先のビジネスがなくても、いずれにせよ起こったであろう変化の推定程度。同業他社の実績、産業又は現地のベンチマーク、ステークホルダーのフィードバックは、投資先による行動がなかったとしてもステークホルダーに起こるであろう変化(反実仮想)の程度を推定するために使用できる例である 十分な状況/
不十分な状況
事実に反する期間 投資先へのエンゲージメントや、投資先の行動や投資先のビジネスがなくても、アウトカムがいずれにせよ持続したであろうと推定される期間。同業他社の実績、産業又は現地のベンチマーク、ステークホルダーのフィードバックは、投資先による行動がなかったとしてもステークホルダーに起こるであろう変化(反実仮想)の程度を推定するために使用できる反事実の例である 十分な状況/
不十分な状況

次元Risk

インパクト
カテゴリー
定義 指標 データ データの
情報源
データに基づく
評価結果
リスクの種類 人や地球への期待されるインパクトの創出を損なう可能性のあるリスクの種類(リスクは9種類存在する)
参考:9種類のリスク一覧
低リスク/
高リスク
リスクレベル リスクのレベル。リスクが発生する可能性と、人や地球に及ぼす影響の深刻さを組み合わせて評価する

Impact Frontiersでは、5つの次元ごとの基本的考え方やデータの収集方法(Norms)を提供しています。

A,B,C
インパクト区分

5 Dimensions of Impactの分析によりデータが揃ったら、個々のインパクトをA,B,C(「A(Act to avoid harm)」、「B(Benefit stakeholders)」、「C(Contribute to solutions)」の区分を用いて分類し、更に企業の総合的なインパクトをA,B,Cで判定することが推奨されています。

インパクトのA,B,Cの分類についてはImpact Frontiersウェブサイト「NORMS | ABC OF ENTERPRISE IMPACT」を参照下さい。