IRIS+

提供

GIIN

想定される利用者

投資家、発行体

投融資や事業を通じて発現を目指すインパクトのカテゴリ(GIINによる定義に基づくカテゴリ)、あるいは解決に寄与しようとするSDGsの目標を選択し、投融資戦略や事業戦略に沿った選択肢を順番に選択していくことで、測定・管理を推奨する評価指標を自動的に提示するツールです。
表示される指標は「5 Dimensions of Impact」に沿ったもののほか、インパクトを「どのように」実現するかのプロセスを測定する管理指標、追加的な評価指標も同時に提示され、ユーザーは自由に評価指標を選択し、参照することができます。ただし、発現を目指すインパクトのカテゴリー、その戦略はIRIS+にプリセットされたものしか選択できず、この分類に沿わないプロジェクト等の場合は、別途ユーザーで検討を行う必要があります。

IRIS+の概要

IRIS+は、2009年にGIIN(Global Impact Investing Network)が公表を開始したインパクト測定ツールで、前身となるIRISをアップデートし、主にインパクト投資家がインパクトのリスク・リターンを踏まえてファンドの投資戦略の策定や個別の投資判断、投資後の支援・モニタリングを行う際の意思決定に、社会的要因や環境的要因を組み入れ、ポジティブインパクトの最大化やネガティブインパクトを最小化を目指して使用されています。
IRIS+では、データの明確化や比較可能性の向上を目的としており、SDGsなどのグローバル目標や運用原則の国際基準、IMM(Impact Measurement and Management:インパクト測定マネジメント)の概念を統合的に提供した初のシステムで、各投資家におけるニーズや優先事項を反映することも可能です。
メールアドレス等の登録をすれば、無料で利用することができます。

図表 IRIS+の特徴

コア・メトリクスの設定

データの明確(透明)性や比較可能性を高めるためのもので、エビデンスや業界のベストプラクティスをもとに提示

テーマ別のタクソノミー(分類表)

一般的に受け入れられているインパクトのカテゴリーやテーマに沿って作成

メトリクスのカタログの更新

先進的なインパクト投資家によって利用されている社会的・環境的パフォーマンスの計測方法の基準を採用

厳選されたリソースや実務的なガイダンス

日々のIMMの実行を支援する目的

SDGsと整合

SDGsの目標とターゲットいずれも含む

他の主要なフレームワークや条約(convention)との整合

インパクト5原則やその他50のフレームワーク、基準、プラットフォームと整合

情報連携(interoperability)

IRISのメトリックを利用した第三者データプラットフォームやシステムと連携可能

(出所)IRIS+より作成

GIINとは

GIINは、インパクト投資の拡大と成果向上を目的として2009年に設立された組織で、世界全体のインパクト投資に関する知見共有やインパクト投資家のネットワーク構築を担っており、GSG(The Global Steering Group for Impact Investment)と並んで同分野の発展に向けて取り組みを行っております。
また、GIINでは、IMMに関して、インパクト投資の指標カタログとしてIRIS及びIRIS+の作成、数年にわたったアップデートが行われています。
日本からは、社会変革推進財団(SIIF)を含む複数の組織がGIINの正式メンバーとして加盟しています。

図表 Impact Manegement Platformにおけるインパクトの5要素

What
  • 一定期間にどのようなアウトカムが発生するか
  • アウトカムはポジティブか、ネガティブか
  • そのアウトカムは、社会あるいは環境にとってどれほど重大か
Who
  • アウトカムの対象となる当事者は誰か
  • 対象となる当事者が経験しているアウトカムは本来あるべき状態と比較してどの程度低水準(underserved)か
How much
  • アウトカムの規模、深さ、持続期間はどの程度か
Contribution
  • ポジティブなアウトカムの増大またはネガティブなアウトカムの低減に、発行体はどのように貢献しているか
Risk
  • アウトカムが想定通りに創出されないリスクには何があるか

(出所)Impact Management Platforomより作成

(注)詳細は、5 Dimensions of Impactのページを参照ください。

想定される利用者とその利用シーン

当初、IRIS+は、投資家が自らの投資に係るインパクトを把握、管理する目的で作成されていましたが、発行体においても自らの事業におけるインパクトを把握し、投資家等に対して情報開示を行う際に利用することも有用とされています。

投資家

投資家にとって、IRIS+の利用は自らの投資に係るインパクトを一貫した方法で計測・管理できる点で有用です。
投資マネジメントの過程で、IRIS+を通じて定義された指標を活用することで、投資家は自らの投資に紐づくポジティブインパクト、あるいはネガティブインパクトを把握し、ポジティブインパクトの最大化やネガティブインパクトの低減に役立てることができます。
利用シーンとしては、スクリーニング、引受け(Underwriting)、デューデリジェンス、パフォーマンス評価のいずれの段階でも活用可能とされています。
そのほか、類似の投資戦略間(類似のインパクト・カテゴリー、テーマ、SDGsなど)での比較も行うことができます。

発行体

企業にとっては、社会的または環境的なインパクトの特定、計測、管理または、投資家に向けた情報開示のためにIRIS+を利用することができます。
IRIS+は、GRI基準やその他50以上のフレームワークや基準、方法論、評価ツールと整合しています。

利用方法

利用にあたっては、(1)17個の「指標」から自身の確認したい指標を選び、(2)各指標における「テーマ」、(3)テーマごとの「戦略」を順に選択することで、前述の5要素に基づく「評価指標」を確認することができます。

図表 IRIS+の指標一覧

which Impact Category best describes your area of focus?

(出所)IRIS+より翻訳

(1)指標の選択

IRIS+で示される17の指標の中から、発現を目指すインパクトのカテゴリーまたは解決に寄与しようとするSDGsの目標を選択します。選択にあたっては、1つずつしか選択できません。

(2)(3)テーマと戦略の選択 

次にテーマと戦略を選択します。例えば、以下では、「エネルギー」の指標を選択したのち、「エネルギーへのアクセス」というテーマを選択した場合に表示される戦略を示しています。
ここでは、「小規模エネルギー源における有害廃棄物の削減」という戦略を選択しています。

図表 各指標のテーマ一覧

農業

  • 食品安全性・小規模農業
  • 持続可能な農業

空気質

  • 綺麗な空気

生物多様性&エコシステム

  • 生物多様性とエコシステムの保護

気候

  • 気候変動の軽減
  • 気候の回復力と適応性

ダイバーシティ&インクルージョン

  • ジェンダーレンズ
  • 人種間の平等

教育

  • 質の高い教育へのアクセス

雇用

  • 質の高い仕事

エネルギー

  • クリーンエネルギー・エネルギーアクセス・エネルギー効率化

金融サービス

  • 金融包摂

健康

  • 質の高いヘルスケアへのアクセス
  • 栄養

インフラ

  • インフラの回復力

土地

  • 天然資源の保護・持続可能な林業
  • 持続可能な土地管理

海&沿岸部

  • 海洋資源の保護と管理

公害

  • 公害防止

不動産

  • 手頃で質の高い住宅
  • グリーン・ビルディング

廃棄物

  • 廃棄物処理

  • 持続可能な水管理・持続可能な水資源管理・水・下水・衛生(WASH)

(出所)IRIS+より翻訳

図表 テーマに基づく戦略例

どのインパクトテーマが、
あなたの優先するインパクトと整合しているか。

  • エネルギーへのアクセス

どの戦略目標が、あなたのアプローチに最も近いか

  • 調理に係る代替エネルギーの改良
  • ヘルスケアに係る代替エネルギーの改良
  • エネルギーに係る連結性の改良
  • 事業に係る照明の改良
  • 家庭の照明の改良
  • 小規模エネルギー源における有害廃棄物の削減

(注)テーマとして、「エネルギーへのアクセス」を選択した場合に示される戦略の一覧を示しています。

(出所)IRIS+より作成

(4)評価指標の表示

上記のとおり、戦略までの選択が完了すると、戦略の概要、目標達成に向けた取り組みの概要、参考となるエビデンス、目標に向けたパフォーマンス計測のための重要な評価指標(コア・メトリクス)、意思決定のためのデータの収集、開示、利用に有用な文献集などを確認することができます。

コアメトリクスについて

「何が目的か(What)」、「誰が影響を受けるか(Who)」、「どれだけの変化が生じるか(How much)」、「どのように変化が起こるか(How)」、「その他のメトリクス(Additional)」の5つの観点から、利用者が確認すべき評価指標が示されます。

図表 テーマに基づく戦略例

What

  • 介入(Intervention)の目的
  • アウトカムのインジケーター:製品販売による温室効果ガスの排出削減量
  • ステークホルダーに対する成果の重要性

Who

  • ステークホルダーの属性
  • ステークホルダーの特性

How much

  • (広がり)温室効果ガスの排出削減の影響がある顧客世帯数及び比率
  • (深さ)製品販売による温室効果ガス排出量の削減割合

How

顧客世帯の詳細
  • 新たに購入が可能となった顧客世帯
製品の詳細
  • 製品販売数及び製品属性
  • 製品の代替によって削減されたエネルギー
顧客サポートまたはフィードバック
  • 顧客のエンゲージメント
  • 顧客サポートやフィードバック

Additional Metrics

顧客世帯の詳細
  • 顧客個人の詳細
  • 類似製品に代わって使用した場合の削減効果
  • 顧客のエネルギー消費
  • 製品価格
  • 代替製品の価格
  • コストの透明性
  • 顧客保護に係る方針
  • 品質保証の仕組み
  • 顧客満足度
  • 製品・サービスを利用する顧客組織の割合
  • 製品販売によって使用される照明時間

(出所)IRIS+より翻訳