ノックイン投信の特徴やリスクとは?
1.そもそもノックイン投信とは?
- 株価指数など対象となる資産の価格(以下、「株価指数等」といいます)があらかじめ決められた水準と等しくなるかこれを超えることを「ノックイン」といい、「あらかじめ決められた水準」のことを「ノックイン価格」といいます。
- 「ノックイン投信」とは、上述の「ノックイン」にならなければ、比較的高い利回りが支払われるといった、特殊な条件が定められた債券(仕組債)を投資対象とする投資信託で、期間中に一度でも「ノックイン」になった場合には、株価指数等に連動して償還価額が変動することとなります。
- また、多くのノックイン投信では、株価指数等が一定水準(早期償還判定水準)と等しくなるかまたはこれを超えた場合に投資信託が早期償還される「早期償還条項」がついています。
- ノックイン投信は、複雑な仕組みの金融商品ですので、商品の特性などについてしっかりと説明を受け、十分に理解したうえで購入しましょう。
魅力
ノックインしない場合には、元本が確保されるとともに、定期預金や個人向け国債などを比較すると、高利回りが期待できます。
注意すべき事項
投資元本が保証されているものではなく、株価指数等の動向によっては、償還の際に損失が生じるおそれがあります。 例えば、日経平均株価を対象としたノックイン投信の場合、日経平均株価が一度でもノックイン価格以下となると、償還価額は日経平均株価に連動して変動することになるため、ノックイン後の日経平均株価があらかじめ設定された日経平均株価を上回らない場合には、投資額を下回る金額にて償還されることにより損失が発生します。さらに日経平均株価が下落し続けた場合、投資額を大幅に下回る金額にて償還されることになり損失が拡大します。※
株価指数等の動向により、満期償還日より前に早期償還される場合があります。
早期償還された場合、それ以降は当初期待した利回りが得られなくなりますが、早期償還によりノックインの可能性はなくなり、損失が生じることを回避できます。
ただし、早期償還するだろうと考えて購入したものの結果的に早期償還とならず、逆にその後の株価指数等の変動によってノックインとなり、投資額を下回る金額にて償還されるような場合もあります。
このため、購入時には、早期償還の条件について、ご投資資金の使途や投資目的に照らしてよく確認するようにしましょう。
※分配金については考慮していません。
説明を受けるべき事項
ノックイン投信の商品内容はもちろんですが、将来の株価指数等の変動が与える影響をグラフや表で確認するなど、ノックイン投信の投資効果についても十分な説明を受けましょう。
2.ノックイン投信の商品内容を理解するポイント
ノックイン投信は、将来の株価指数等の変動により損失が生じる可能性があります。そのため、以下のポイントについて、販売会社から必ず説明を受けて商品内容を十分に理解しましょう。
ポイント1 募集・償還条件等の確認
- 「信託期間」・・・いつ償還されるのか。
償還までの期間が長いほど、株価指数等の変動の影響を受ける可能性が高くなります。また、「早期償還条項」がついている場合には、条件をしっかり確認しておきましょう。
- 「分配金」・・・投資信託の分配金はどのくらいを目指すのか。
- 「償還価額」・・・償還される金額はいくらか。ノックインとなった場合、償還価額はどのように変動するのか。
ノックイン後は、株価指数等に連動して償還価額が変動することとなり、償還価額が投資金額を下回る可能性があるため、ノックインの条件や償還価額の計算方法をしっかり確認しておきましょう。
- 「手数料」・・・購入時や解約時などに支払う手数料はどのくらいか。
直接支払う必要があるもの以外にも、信託報酬など間接的に負担しなければならない費用もありますので、しっかり確認しておきましょう。
- 「中途解約」・・・中途解約は可能か。仮に可能な場合、取扱条件はどうなっているか。
など、投資信託の募集・償還条件等を確認しましょう。
ポイント2 早期償還の条件についての確認
- 早期償還の判定日はいつか。
- 「早期償還判定水準」はどの程度の水準に設定されているか。また、早期償還判定の基準となる株価指数等は、過去にどの程度変動したことがあるか。
- 早期償還時の償還価額はどうなるか。
など、早期償還の条件について十分に確認しましょう。
ポイント3 ノックインの条件についての確認
- ノックインの判定期間はどのように設定されているか。
- ノックイン価格はどの程度の水準に設定されているか。また、ノックイン判定の基準となる株価指数等は、過去にどの程度変動したことがあるか。
- ノックイン後の株価指数等の変動により、償還価額はどのように変動するか。
など、ノックインの条件について十分に確認しましょう。
3.ノックイン投信の償還について
- ここでは、株価指数等の変動によって、ノックイン投信の償還条件がどのように変わるのかという点について、具体例を用いてご説明いたします。
- 下の図は、日経平均株価の値動きによって償還条件が決定される仕組みのノックイン投信について、想定される主な償還パターンをグラフに表したものです。

- 1万口あたり10,000円(投資元本)で100万口分購入(100万円分)
- 分配金相当額:1万口当り100円
- 当初株価:10,000円
- ノックイン価格:7,000円
- 早期償還判定水準:11,000円
- 償還価額(1万口あたり)
○早期償還の場合:投資元本10,000円+分配金相当額100円=10,100円
○満期償還の場合:
ノックインしなかった場合
投資元本10,000円+分配金相当額100円=10,100円
ノックインした場合
{投資元本10,000円×(最終評価日の日経平均株価÷当初株価)}※
+分配金相当額100円
※計算の結果、10,000円を超える場合は10,000円 - 償還までの分配金受取り額、手数料、税金については考慮していません。
<早期償還の場合>
- ケース①
日経平均株価が早期償還の判定日(初回)に早期償還判定水準を上回ったため、
償還価額10,100円×100万口/1万口=101万円 にて早期償還されました。 - ケース②
日経平均株価がノックイン価格を下回りましたが、その後の早期償還の判定日に早期償還判定水準を上回ったため、
償還価額10,100円×100万円/1万口=101万円 にて早期償還されました。
<満期償還の場合>
- ケース③
日経平均株価が各判定日において早期償還判定水準を上回らず、かつ株価観察期間中に一度も日経平均株価がノックイン価格以下になりませんでしたので、
償還価額10,100円×100万口/1万口=101万円 にて満期償還されました。 - ケース④
日経平均株価が各判定日において早期償還判定水準を上回らず、また、株価観察期間中に日経平均株価がノックイン価格を下回ったものの、最終評価日の日経平均株価(12,000円)が当初株価を上回りましたので、
償還価額10,100円※×100万口/1万口=101万円 にて満期償還されました。
※〔投資元本10,000円×(最終評価日の日経平均株価12,000円÷当初株価10,000円)〕=12,000円
と上限10,000円を超えるため、償還金額は10,000円+100円=10,100円となります。 - ケース⑤
日経平均株価が各判定日に早期償還判定水準を上回らず、また、株価観察期間中に日経平均株価がノックイン価格を下回り、かつ最終評価日の日経平均株価(6,000円)が当初株価を下回りましたので、
償還価額6,100円※×100万口/1万口=61万円 にて満期償還されました。
※〔投資元本10,000円×(最終評価日の日経平均株価6,000円÷当初株価10,000円)〕+100円
=6,100円
ノックイン投信に特有のリスク
- ノックインとなった場合は、株価指数等に連動して償還価額が変動するため、償還された金額が投資額を下回り、損失が発生する可能性があります。
- 一般的にノックイン投信は中途解約できないものが多く、仮に中途解約ができた場合でも解約価額が申込価額を下回り、損失が発生する可能性があります。
上記の事項は、一般的なノックイン投信の重要な事項についての考え方を示したものです。したがって、ノックイン投信の商品性等によっては上記以外の重要事項もありますので、目論見書などによりきちんと説明を受けて、内容を十分に理解しましょう。また、上記の事項を含め、目論見書を読んで不明な点があれば、販売会社に説明を求めましょう。