投資を始めたい方、初心者の方へ
相場は明日もある
明日という言葉に抱くイメージは、日本と西洋では大きな違いがある。 日本のそれは、「明日は明日の風が吹く」や「明日ありと思う心のあだ桜」と、やや刹那的でありヤケ気味だが、西洋では「明日は今日よりもっと良い日だ」と明日を楽しみにする風潮が強い。
株式投資で“明日”を見る場合は、日本的心情ではなく、西洋式でいきたいものだ。特に買いの場合は、この気持ちが大切になる。
せっかちというのか、そそっかしいというのか、好材料が出現するとわれ先に飛びつき買いをする。今買わなければ、永久に買い損なうといわんばかりの風情である。しかし、相場の方は皮肉にもそれが目先の天井で翌日には安くなるといったケースが多い。材料が出たら、できるだけよく調べてから買っても決して遅くない。それが翌日だろうと何日後であろうともだ。材料が本物であって、実際に株価が上がるなら、1日ぐらいの遅れは大勢に影響ないではないか。みんなが一斉に買いついているときの相場は不自然なものである。その後に現れる相場こそ、本来の姿だ。これを待って仕掛けることが成功の道につながるといえよう。「相場は明日もある」とは、焦りを戒め、機会をじっくり待つことを教えた格言である。
後述のとおり、徳川時代の相場訓にも「待つ心」を説くものは多い。なお、ウォール街でも「売り買いは3日待て」と言っている。
- 高きをば、せかず急がず待つは仁。向かうは勇、利乗せは智の徳。(三猿金泉秘録)
- 売り買いを、せかず急がず待つは仁。とくの乗るまで待つも仁。(同)
- 買いぜきをせぬが強気の秘密なり。いつでも安き日を待って買え。(同)
- 売りぜきをせぬが弱気の秘密なり。いつでも高き日を待って売れ。(同)
- せくゆえに安きを売りて、あたまから高きを買ってからうす(反対の売買)をふむ。(同)
- 買いおくれたりと思わば、ただ買い場を待つべし。(八木虎之巻)
- 米商いは附出し(第一歩)大切なり。附出し悪しきときは、決して(必ず)手違いになるなり。また商い進み急ぐべからず。急ぐときは附出し悪しきときと同じ。(宗久翁秘録)
- 売り買いとも今日よりほか商い場なしと進み立つ(心がはやりたつ)とき、三日待つべし。(同)
- 商い急ぐべからずとは、天井値投、底値段を見ることなり。(同)
- この米ぜひぜひ上がるべし、今日中に買うべしと進み立ち候節、二日待つべし。ぜひぜひ下ぐべしと売り気進むときは、これまた二日待つべし。(同)
- 大立身を急がず待つの心を成し、おのが分際相応、気の痛みにならざるよう心がけるべし。(商家秘録)